2018.9.27 宮崎県串間市にて講演会

2018年9月27日に宮崎県の最南端にある串間市の講演会にお呼び頂きお話をさせて頂きました。
約100名の参加者の前で「不在を生きる〜ある家族の生と死の物語〜」という演題で、拙作「The Absence of Two」にまつわるお話を1時間半ほどしたのですが、この講演会で最も印象的だったのは、最後の質疑応答の時にある70代くらいの小柄なおばあさんが話してくれたことでした。そのおばあさんは僕の目をまっすぐ見て、こう言い始めました。

「今日はお話を聞いてとてもよかったです。実は私は若い頃からずっと死にたいと漠然と考えていました。そのことを誰にも言うことができませんでしたし、死にたいと思う私のこの気持ちを他人が理解できるとも思いませんでした。私のこの願望を止めてくれたのは身体障害者の子どもでした。私が居なくなったらこの子はどう生きていけばいいんだろう。そう思うと、死ねませんでした。そして結局この年まで生きてきました。だから今日の話を聞いて思ったのは、どうして彼は最愛のおばあちゃんを残して死んでしまったのだろうと思いました。でも私は自分の本当の気持ちを人に言えなかった彼の気持ちも分かります。言えないんですよね。本当に。」

あの時なんで僕は気付いてあげられなかったんだろう。
僕にだけでも言ってくれれば。
何で何も言わずに逝ってしまったんだろう。

あっちの世界に或る日突然行ってしまった従兄弟のことを想う時、僕は今更取り返しのつかないこととは分かっていながらも、ずっとそう考えてきました。悔恨にも似た気持ちになって、自分を責めたりしました。
本当はこんなこと思いたくないけれど、人と人とは結局は本当の深い所では分かり合えないのではないかと思うのでした。
だからこそ「言えないんですよね。本当に」と言った、このおばあさんの言葉が妙に印象的で深く沁みたのでした。
人と人とは本当のところでは分かり合えない。
そう考えるのは悲しいけれど僕は、その「分かり合えない」を前提にして、分かり合う、歩み寄る、理解しようと努める、にじり寄る、寄り添うしかないのかなと今現在考えています。
そしてそこに何か希望があるのではないかと思うのです。
そんなことを考えながら講演会を終え、台風の影響で時化た太平洋をしばらく眺めて帰りました。

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